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文学少女の世界(第3回)

2010年 08月12日 00:12 (木)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)
(2006/12/25)
野村 美月

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友情 (新潮文庫)友情 (新潮文庫)
(1947/12)
武者小路 実篤

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さて、書評文学少女の世界も3回目、今回の中心人物は主人公心葉の友人、芥川です。

題材は白樺派の旗手武者小路実篤の代表作『友情』です。

概略は

脚本家を目指す主人公野島は或る日出会った友人の妹杉子に惹かれる。
野島は親友の大宮に心のうちを打ち明け、これに理解を示した大宮は野島と杉子の間を取り持とうとする。
ところが杉子が愛を向けたのは野島ではなく、大宮であった。

これに気づいた大宮は芸術の極めるためと一人欧州に旅たち、杉子の想いを断ち切ろうとする。
野島は杉子の大宮への思いに気づきながらも、杉子へのやまれぬ思いから、ついに結婚を申し込むがにべもなくあっさりと拒絶されてしまう。

打ちひしがれる野島の元に、欧州の大宮から手紙が届く。
そこにはただ、「自分の執筆した同人誌を見てほしい」とだけ書いてあった。

同人誌の内容は杉子から大宮へ自分の心情を切々と訴える手紙。
それに対し、野島への友情を裏切るわけにはいかぬと拒絶する大宮の返信。
それが幾たびも続き、ついには葛藤の末、杉子を受け入れる二人の交信記録だった。

これを見た野島は大宮の欧州土産のベートーベンの仮面を砕き、大宮に返信を書く。
苦心したであろう大宮に対する同情心、杉子と友人を失ったことに対する失望と怒り、そして自分から杉子を奪った大宮に対する決別と挑戦の意思を込めて。

と、『友情』は古きよき時代の青春小説です。
三角関係という泥沼展開ですが、杉子の純真、大宮のストイックさ、そして野島の激情と、起伏の烈しい内容ながら読後感は悪くないです。
むしろ、大宮に対する恨みを述べるでもなく、挑戦の意思を発揮する野島には好感が持てます。

同じ三角関係の構図の漱石『こころ』とはあまりに対照的な描き方ですが、こういうのも悪くないですね。


『文学少女』の三角関係(作中では男2対女1と女2対男1の二重三角関係となっていますが)は物語の進展に従い泥沼の様相を深め、芥川が追い詰められていくのですが、
遠子先輩解説の『友情』がこの関係に終止符を打つことになります。

『友情』の原作を読んだ方には、なるほど、それだけの力がこの作品にはあると実感していただけるかと思います。

毎度のことですが、文学とは生のヒントであり処方箋であることを遠子先輩には教えられる気がいたします。

☆4.0

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