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有頂天家族探訪記⑩

2013年 09月25日 19:35 (水)

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「父上の最後の言葉はそれだったよ。父上はあの夜、俺にそう言ったのだ。あれだけ長い間、井戸の底に籠もっていて思い出せなかったことだが、今の今、ようやく思い出した」
 次兄の全身で阿呆の血が沸き返るのが分かった。心臓の鼓動を聞く思いがした。
「面白きことは良きことなり!」
 高らかな次兄の宣言に、私と弟も唱和した。


(幻冬舎文庫 森見登美彦『有頂天家族』P365より)

「面白きことは良きことなり」
この言葉のもと下鴨家兄弟、そして亡き父の心は一体と化した瞬間である。

有頂天家族探訪記①
有頂天家族探訪記②
有頂天家族探訪記③
有頂天家族探訪記④
有頂天家族探訪記⑤
有頂天家族探訪記⑥
有頂天家族探訪記⑦
有頂天家族探訪記⑧
有頂天家族探訪記⑨

いよいよ本作最大の見せ場、第十二話「偽叡山電車」でございます。息をもつかせぬ原作小説の描写。それを再現するP.A.WORKSの「本気」がここに集約されたと言っても過言ではない素晴らしい出来だったと思います。
今回は偽叡電の驀進ルートを原作小説の描写とともに辿り、原作未読の方にも原作小説の面白さ、見事映像化したP.A.WORKSの「仕事」を堪能いただきたいと思います。
以下、記事で斜体青字で記載してあるのは原作よりの引用文章になります。
では!

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第十二話:夷川発電所
「はたして次兄は役立たずであろうか。
はたして自分はひとりぼっちであろうか。
はたして希望は絶えたであろうか。
弟は偽電気ブランの小瓶を握りしめて身を翻し、一路、珍皇寺を目指して駆けた。」(P357)



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第十二話:八坂通り東大路西入る
六道珍皇寺の正門のある松原通かと思ったら一本北の八坂通でした。

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第十二話:六道珍皇寺
「なにゆえ弟がそのとき、井の中の蛙の手を借りるという誰も想像がつかなかった奇手を思いついたか、それこそ、どん詰まりのやけっぱちの苦し紛れの地平に至って初めて手にした一世一代の天啓であった。」(P357)

そして矢四郎は井戸の中の矢二郎の口になみなみ偽電気ブランを注ぎます。

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第十二話:六道珍皇寺
 「父が冥途へ発って以来、たえて聞いたことのない朗らかな次兄の声が井戸の底から響いた。
「捲土重来!」」(P358)


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第十二話:六道珍皇寺

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第十二話:司津屋
 「どーんと大きく偽蕎麦屋が揺れたと思うと、どこやらへ運ばれて行くような感じがした。」(P360)

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第十二話:寺町今出川
 「電車は寺町通を疾走しているらしい。金閣と銀閣が車窓へ顔を押し付けて、「どうなってんの」と口々に言った。」(P361)

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第十二話:京極小学校付近

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第十二話:京極小学校付近

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第十二話:京極小学校

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第十二話:京極小学校付近
 「偽叡電は京都御苑の森のかたわらを南へ駆け抜けてゆく。」(P362)

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第十二話:京都市資料館前
 「次兄は疾風怒濤と言うべき快速で寺町通を押し通った。
 葉を落とした並木が、次兄の通り過ぎる風に煽られて揺れている。」(P363)

実はこのシーンには矛盾があり、南下しているはずの偽叡山電車が、この構図では北上していることになっているんですよね…。
改めて視聴したところ、偽叡山電車は南進しておりました…謹んで訂正致します。(9月30日)

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第十二話:寺町丸太町
「北から驀進してくる叡山電車に仰天した自動車が大慌てで道を譲り、仰天した人間たちが軒下へ転げこむ。」(P363-364)

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第十二話:寺町二条
 「二条を越えるところで寺町通の道幅が狭くなる。角の雑居ビルへ突っこみそうになるのを辛うじてかわし、偽叡山電車は身を細めるようにしてさらに南へひた走る。」(P365)

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第十二話:寺町二条付近
向かいにフラワーショップがあり、二階からぴったりのカットが撮影できるかと思います。外見では窓枠の形も一致していました。

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第十二話:寺町御池
「車両の先頭に立って見やると、京都市庁舎の植えこみの脇をぬけ、広い御池通を渡った先に、夕闇に燦然と白く輝いて異世界へ通じるトンネルのように見える寺町通アーケードが迫ってくる。」(P365-366)

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第十二話:寺町御池
実は矢二郎の回想シーン、原作では二条通の手前ですが、アニメでは御池通の手前となっています。ここはアニメの演出が正解だったかな、と私は考えます。

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第十二話:寺町御池
 「信号機が青なのを良いことに、次兄はそのまま速度を緩めずに御池通を渡り、寺町通アーケードへ突っこんでしまった。」(P366)

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第十二話:寺町商店街・鳩居堂前
「周囲が急に目映い光に包まれた。」(P366)

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第十二話:寺町商店街・鳩居堂付近
 「次兄は本能寺の門前を駆け抜け、違法駐輪の自転車を撥ね飛ばし、洋服店の前に置かれた売り物のワンピースを吹き飛ばし、古書店の軒先に積まれたおびただしい美術書をはためかせた。」(P366)

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第十二話:寺町商店街・鳩居堂
「あまりの速さに強い風が次兄の背後で生まれるらしい、「鳩居堂」から吸い出された美しい扇や便箋がアーケードの中を吹き上げられて舞っているのが見えた。」(P366)

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第十二話:寺町商店街・三条通
 「寺町三条にさしかかったが、到底方向を変えられない。それどころか、まっすぐであるべき寺町通が右へわずかにずれている。(中略)「自転車は降りて押して下さい」の看板を撥ねてしまい、飛んだ看板がファーストフードショップの窓を木っ端みじんにした。」(P366-367)

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第十二話:寺町商店街・三条通

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第十二話:寺町商店街・三条通
「三条寺町交番と「かに道楽」の間をすり抜けながら、次兄は泡を喰って右へ曲がる。」(P367)

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第十二話:寺町商店街・三条通

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第十二話:寺町商店街・三嶋亭前
「「ああ悪いことをした」と次兄は呻きながら「三嶋亭」の軒燈をかすめて切り抜け、なおも寺町通を南進した。」(P367)

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第十二話:寺町商店街・錦天満宮前
 「そのまま我々は四条を目指して走ったが、妙なことに四条通へなかなか出ない。さらに妙なことに、三条から四条までまっすぐに南北を貫いているはずの寺町通が、かすかに蛇行しているように思われる。」(P367)

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第十二話:寺町商店街・錦天満宮
「本格的に妙だと気づいたのは、橙色に輝く提灯で埋め尽くされた錦天満宮を二度目に見たときである。錦天満宮は二つもない。」(P367)
錦天満宮の鳥居は確認できますが、なに、この「ミロのヴィーナスみたいなオブジェ・・・?」

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第十二話:寺町商店街・四条通入り口
 「街の上空を鴨川へ向かって延びた偽寺町通は、ついに途切れた。」(P370)

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第十二話:鴨川・四条大橋付近
 「偽叡山電車が勢いそのままに飛び出した。車窓から見ると、光り輝く白いトンネルが寺町三条のあたりから立ち上がり、うねくるチューブのように、寺町・新京極・河原町・先斗町の夜景を飛び越えて、鴨川まで延びている。」(P370)

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第十二話:鴨川・四条大橋付近

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第十二話:鴨川・四条大橋付近
「それこそ、あの「弁天の奥座敷」の飛行を司る中央制御装置、空飛ぶ茶釜エンジンであった。弟が座席の下に隠してあった赤玉ポートワインをなみなみ注ぐや否や、次兄は「空飛ぶ叡山電車しかも偽物」というもはや何のことだか分からない物体に変貌した。」(P370)

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第十二話:鴨川・四条大橋付近

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第十二話:鴨川・四条大橋付近
「弟は赤玉ポートワインを茶釜エンジンへ注ぎ、次兄はぐるりと身体を廻した。京料理「千歳屋」へ狙いをさだめた。」(P372)

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第十二話:もみ葉
「私は窓を開いて少しだけ扇いでみたが、それでもまだ強かったらしい。鴨川の上を漂っていた偽叡山電車は千歳屋へ近づいていったが、勢いがつきすぎた。あれよあれよという間に座敷の硝子戸が近づいてきて、空飛ぶ偽叡山電車は勢いをゆるめずにそれを突き破ったのである。」(P372-373)
アニメのほうが勢いがありすぎて、このシーン思いっきり笑いましたw

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第十二話:もみ葉
 「千歳屋の二階座敷は崩壊した。」(P373)

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第十二話:もみ葉
 「ぬうっと伸びた影はその老人のものである。かたわらには弁天が微笑んでチョコナンと座っている。淀川教授を含むほかの面々は先ほどの衝撃がさめやらぬまま、座敷の隅でこちらへ尻を向けて頭を抱えているのに、弁天とその老人は座敷の真ん中に膝を揃えて泰然自若としている。」(P376-377)

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第十二話:木屋町四条下る
崩壊した千歳屋から「金曜倶楽部」の宴席は「偽右衛門選挙」が行われている「仙酔楼」へ。

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第十二話:木屋町四条下る

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第十二話:鳥彌三

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第十二話:鳥彌三
「仙酔楼」のモデルとなっているのは料亭・鳥彌三です。こちらはEDクレジットでも表記されているとおり、協力店となります。

と、いうわけで、アニメ・実写背景・原作文章を比較し本作品の魅力をトータルに知っていただきたいと思い、今回はいつもとは記事の形式を変えてみましたがいかがだったでしょうか?
今回このような形式を採用しようと思ったのは、他でもない先述のとおりアニメにおける偽叡山電車の描写に感動したからでありました。
また、この記事をとおして原作未読の方にも、原作を読もうという動機付けとなるのであれば、これほど嬉しいことはありません。

次回、いよいよ最終回!


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*引用画像は全て比較研究目的で掲載しており、著作権は全て「有頂天家族」製作委員会にあります、ので。

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2013年09月29日 17:44

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Re: No title

2013年09月30日 00:06

ご指摘どうもありがとうございます。

キャプの静止画だけを見て確認が不足しておりました。
謹んで、記事を訂正させていただきます。

偽叡山電車

2013年10月02日 20:54

偽叡山鉄道の回を見た時からこちらのサイトの情報が更新されるのを楽しみにしてました。

自分でも京都マップを見ながら矢三郎達がどうゆうルートを走ったのか調べたりしていたのですがやはり全て分からなくて(特に京極小学校前~寺町二条のあたりがわからなかった)、今回の記事を見て走ったルートが非常によくわかりました。
しかしこの回に限らず作品内での京都の町の再現っぷり、描きこみっぷりが半端ないですね笑

今回原作の文章も引用していただきましたが、これを読んでアニメでは本当にいい演出をしてるのがよくわかりました。
偽叡山鉄道が疾走するあのスピード感あふれるシーンはアニメならではだと思いました。
それにしても千歳屋に突入するシーンはアニメの方は迫力ありすぎでしたね笑